抽象と具体の架け橋

できることを増やすために様々な活動をしています。誰かの新しい挑戦の糧になれば幸いです。基本的に月・木更新です。

フィクション:気の滅入りと、変化について

本稿はフィクションです。

家に帰ると、ヘルメットを手に取りすぐに飛び出した。
ここのところ雨続きで、気が滅入る。

 

気が滅入っているのは俺だけではないようで、ストレス耐性の無い者からどんどん怪物化し始めている。

オフィスや、通勤電車はカリカリしている人が増えており、事件でも起こりそうな空気だ。

 

そんな時は飛び出して、風を感じたいものだ。

バイクに乗るのは10日以上ぶりだが、出かけるのを待っていたかのようにエンジンはすんなりとかかる。久しぶりに乗ったからか、動き出しのトルクも良く感じる。

 

甲州街道は、この時間ではもう車も少ないが、運転手が疲れてるのか制限速度あたりでトロトロ走っている車がいる。

後ろでゆっくり待っていても面白くないので、信号待ちの間に外側から先頭に出る。

前に出てしまえば、誰も付いてくることはなく、ミラー越しにも光の粒になっていった。 住む世界が違うのだ、とっと消えてくれた方がせいせいする。

 

時々、遅い車にイライラしながらも、いいペースでお台場までこれた。

しかし、いくら走ってもどうも調子があがらない、スピードや、エンジンの回転数では、この上半身に纏わりつくような何かを払いのけることができない。

走っているときはまだマシだが、信号で止まった瞬間にまたむず痒くなる、何かに焦っているのだろうか。

 

お台場を流していると、爆音のバイクや蛇行運転をするバイクがいた。

高級住宅地かもしれないが、こんなんじゃゆっくり寝れないだろう。

警察も見回ってはいるようだが、ライダーと入れ代わり立ち代わり現れるのを見る限り、取り締まる気はなさそうだ。

 

こんなところに長居しても嫌気がさすだけなので、さっさと湾岸線を下ることにした。

湾岸線には、今日もトラックが多い。

トラックの数は何に関連しているのかはわからないが、多い方がきっと景気がいいのだろう。これだけ台数がいれば、景気は右肩上がりを予定しているのだろう。

 

環状七号線に入ると、今日もそこらじゅうで工事をしており、車の流れも良くはない。

スピードを出すことしか能のない下手な車が、先を争って結局詰まっている。

車の性能が良くても周りを見る目がないヤツばかりだ、ウンザリする。

 

公道を走っていると「そこまでしてスピードを出したいか?」というようなバイクを見かけるが、それは今の俺のように何かに憑りつかれていたのかもしれない。

どうすれば、こいつから逃げ切れるのだろうか。

 

ふと横に1台のセダンが現れた。

こいつは前にも何度か見たことある、いい速度で走っていくセダンだ。

後ろについてくるような車もなく、一人旅だと思っていたが、同じようなヤツがいた。

それだけでとても嬉しく感じ、まとわりついていた何かを払いのけるほどの気持ちが、体の中から出てきた。

 

俺は一緒に走るような仲間が欲しかったのだろうか。

確かに誰かと始めたものでなく、1人で始めたことほど長続きするし、その途中で仲間になったやつとは上手くいくことが多い。

何かを始める時期なのだろうか。

 

また、バイクを今の自分に合わせていきたい、バイクを改造したいと感じた。

これまでバイクと自分のバランスは良かったのだが、自分が何かを目指し変化した時にはこいつも変化してくれないと一緒に動けない。

 

これは「族」への1歩目が始まったのだろうか。

 

Sany.