前日
楽しみな日は遠く感じてしまうので、直前は忙しい方が過ごしやすいのは俺だけだろうか。
明日は2ヶ月ぶりの登山に行く。
本当は先週に行く予定だったのだが、アウトドアはなにかと天候に左右されてしまう。
前日の今日は仕事の原稿修正に追われ、家についたは21時を過ぎたあたりであった。
通勤電車の湿気と熱気で体は汗をかいており、家についたころには、安堵から倒れたい疲労感があった。
先週行けなかった分で、すでに荷造りをしていたのだから、準備はバッチリだと思っていたが、彼女から「明日は早いのだから、すぐに出れる準備をしておいたほうがいい。 そもそも、何時の電車に乗るつもりなのだ」と厳しめの指摘が入る。
この意見は正しい、だいたいの俺は朝に弱く、朝のパフォーマンスに期待すべきではない。
のに、疲れで動きたくないという言い訳は、通常は通らず、それなら仕事のスケジュールを考え直すべきだ という合理的な反省に帰着するだけである。
ここは一つ、シャワーに逃げることにしよう。
汗を流すと心なしか気持ちも軽く、再び言われる前にやってしまおうという、攻めの気持ちがでてくる。
しかし、リビングに戻ると彼女はアイスクリームを用意して待っていた。
せっかくのやる気がアイスに溶かされないようにと我慢が頭をよぎるが、きっと先ほどの厳しめの意見を言ってしまった、彼女なりの気遣いなのだと気づき、アイスをもらう。 ここが彼女の憎めないところなのだが、俺の明朝は雲行きが怪しい。
一息つく前に、明日の荷物を再チェックする。
GoProを忘れていた、慌てて充電器を探す。
他には特に忘れ物もなく、明日の朝着る服とハイドレーションを空にして置いておいた。
当日
翌朝、天気は曇り、まぁ雨が降るよりはマシだ。
想像よりかは頭がスッキリしている、今のうちに家を出てしまおう。
朝ごはんのサンドイッチと、山頂で食べるお昼のおにぎりとラーメンをコンビニで買う。
今回は登山初の仲間もいるので気持ち多めに買った。
駅で予定通りに電車を待っていたが、こない、焦る。
スマホで確認すると反対方向のようだ、あれ?おかしいなと思ったが、反対側のホームのアナウンスがある。
記憶違いかと、反対側の電車に乗ると、元居たホームに電車が入ってきた。遅れていたらしい。
判断を誤ったが、なに、どのみち到着はするのだ。
何しろ10分ほど余裕のあるプランで電車に乗っているのだ、都内の1本くらいなら取り戻せる。
向かう電車
登山の待ち合わせというのは、駅ではなく電車で自然と集まっていくことが多い。
それぞれが沿線からくるので待ち合わせの駅というのは設定しにくいのだが、本数が少ない麓の駅は同じ電車になりやすい。
また、駅で待ち合わせるとバスに乗り遅れやすく、電車の中でその日の計画などを会話していくスタイルが、なかなかに好きだ。
今回も中央線の車両内での待ち合わせだ。
自粛解禁というだけあって、登山客も多い。
無事に集合できた今日の仲間と、ルートやお昼のメニュー、帰りの温泉などを話題にしながら、今日の行程をおさらいする。 1時間以上かかる乗車時間もあっという間だった。
Sany.